知っているようで知らない、それが寒冷地仕様。
寒冷地仕様と聞くと、みなさんは何を思い浮かべるでしょう。1年の半分近くを厳しい寒さと、深い雪の中で過ごさなければならない北海道だもの。寒さ対策ナシではどうにもお話になりません。代表的な寒冷地仕様といえば、たとえば住宅関係がそうですね。断熱材やすき間風が入らない断熱窓、あるいは外壁材、屋根、凍結しない水栓など、氷点下が何日も続く日やうんざりするほど雪が積もった日でも、快適に過ごせる工夫や技術がたくさん詰まっています。最近は寒冷地エアコンを使うお宅も増えてきました。ほかにもモコモコのセーターや毛糸の靴下、ファーのロングブーツなんてところも、真冬にしか着ないので寒冷地向けアイテムといえるかもしれません。そうそう。そういえば、寒冷地手当という名目で暖房費を支給してくれる会社や職場がありますが、それはそれで羨ましい……。おっと話がちょっと横道にそれました。
ところでみなさんは、クルマにも寒冷地仕様があるのをご存じでしょうか?およそ氷点下20℃以下の状況でも、クルマが寒さや雪で極力ダメージを受けないように装備された仕様のことです。じゃあ、それは一般車の仕様とどこが違うの?と聞かれても、知らない人も多いようなので、今回はその具体的な特徴をご紹介しましょう。
装備の強化と凍らないための工夫がいっぱい。
寒冷地仕様車と一般車は、見た目は全く変わりません。では何が違うかといえば、2つに大きく分かれて、ひとつは装備の強化や凍らないための工夫です。つまり、ものすごく寒い日や大雪が降った日でも、通常通りにエンジンが始動できて、安全で快適に走れるように対策されたもの。具体的にはバッテリーがそうです。氷点下ではどうしてもエンジンのかかりが悪くなってしまうため、寒冷地仕様のクルマは通常より容量の大きなサイズを搭載してバッテリー上がりを未然に防いでいます。またヒーターを内蔵したドアミラー、シートヒーター、ヒーターリアダクト、リアフォグランプ、凍結防止のためにドアの内側にスポンジを設定するなど、車種やグレードによってさまざまな装備が付けられています。また設備面だけに限らず、クーラント液やウォッシャー液に不凍液が入っているのも、凍らないための対策です。こうした装備や工夫のおかげで、冬の北海道でも安心してクルマを運転することができるのです。
気づきにくいけれど、塗装にも違いがあります。
もうひとつの違いが、寒冷地に対応したクルマの補強です。とくに年間の降雪量が多く、路面が凍って危ない北海道では、どうしても交通事故が起こりやすくなります。その対策として、道路に定期的に融雪剤を散布していますが、これがクルマに良くありません。確かに融雪剤のおかげで凍りにくくはなりますがその反面、クルマの塗料を溶かしてしまうのです。そのため寒冷地仕様のクルマには、融雪剤の影響を受けない特別な塗料が使われています。また冬のワイパーも、夏用のものと全然違うことはご存じでしょう。ワイパーのゴムは寒さにさらされると硬くなってしまうため、まるで役に立ちません。それに大雪のときは拭き取りの面積が大きなワイパーでなければ威力を発揮しないので、冬用のワイパーには特別なゴムが使われていることと、ワイパーモーターを強化することで、視界の安全を確保しているのです。
知らない人には教えてあげましょう。
以上のように、寒冷地仕様車は一般車よりも装備が充実している分だけ、金額的にちょっと高くなります。それは仕方がないことです。でもだからといって、冬の北海道で寒冷地仕様車ではなく一般車で走るのはやはり危険で、トラブルに巻き込まれる確率もグッと高くなります。もし万一、事故にでも遭ってしまったら修理代やその他で大きな出費がかからないとも限りません。それを防ぐための安心料だと考えればいいのではないでしょうか。
現在、北海道で販売されているクルマのほとんどは寒冷地仕様車です。もしみなさんや周りの方が新しくクルマを購入するときは、カタログを注意して見ることをおすすめします。また、お友だち同士でクルマの話が出てきたときに寒冷地仕様のことを知らない人がいたなら、ぜひ教えてあげてください。ときには知識をひけらかすことも大事だと、誰かが言っていましたし。ちょっと尊敬のまなざしを向けられるかもしれませんよ。